テスラCEO イーロン・マスクに学ぶ、事業の課題設定において重要なこと

2016年12月08日 23:53

上の動画はY Combinatorというベンチャーファンドが運営するメディアから拝借したもので、オリジナルのページはこちら。インタビュアーのサム・アルトマンからたくさんの質問が投げかけられているが、その中で興味深いと思ったのがこの最初の質問。

もし、自分が今22歳の起業家だったら何をするか?

答え:

何でもいい。世の中に役に立つことであれば、大きなことであれ、ちょっとした改善であれ良い。必ず世界を変えるようなものでなくてはならないわけではない。

・だけど、人類に最も大きな影響を与えるという意味ではAI(人工知能)。それが、人類にとってプラスであるような方向づけが必要。最も緊急の課題といえる。

・あとは、遺伝子関連。遺伝病を治せたり、遺伝子プログラミングによってアルツハイマーのような病を予防できたらすごい。それが2番目。

・それから、脳に対する高い帯域(注:大量の通信を受け入れるネットワークの「太さ」)かな。パソコンや電話で人類は「超人的」な能力を手にしたけど、今は帯域で制限されてる。

以下感想:

イーロン・マスクの最大の特徴は、「あまりにもシンプルな目的志向の思考プロセス」だと思う。

彼が今、主に取り組んでいる事業分野は「ソーラーエネルギー(ソーラーシティ)」「電気自動車(テスラ・モーターズ)」「宇宙飛行(スペースX)」の3つ。

この3つの共通点は、どれも「このままだと人類の未来がやばいから、今のうちにできることをやっておこう」という至極シンプルな課題設定に基づいていることだ。

ソーラーエネルギーや電気自動車はいうまでもなく「持続可能エネルギーによって社会が回る仕組みを作ろう」という取り組みだし、宇宙事業にしたって「このまま人口が増え続けるとみんな地球に住めなくなる」という(突飛ではあるが)シンプルな物理的ロジックに基づいた問題提起でしかない。


ここから我々が学べるのは、「何をやるか」という課題設定自体はシンプルに考えた方がよいということだ。課題設定をシンプルにすることには、いくつか明確なメリットがある。


一つ目は、「誰もにその課題を理解してもらいやすい(=共感を得やすい)」ということ。

事業とは「人を巻き込むこと」そのものである。何か新しい製品を作って、それを使ってもらうというのは、相手を「巻き込む」ということに他ならない。その時に、やっていることがやたらとややこしいと、それを理解してもらうために余計な努力が必要になる。

その一方で、イーロン・マスクのように極めてシンプルな課題設定を行っていれば、誰でも「それは問題だよね」と理解できる。まず、課題に関する共感が得られる。そうすると、「じゃあどうやったらそれを実現できるのか」という方法論だけに議論の軸を集中させることができるのだ。この違いは大きい。


シンプルな課題設定を行うメリットの二つ目は、「誰もやったことのない課題に取り組むことができる」ということ。

これは、逆を考えるとわかりやすい。通常、新しい事業を考える際には、既存の市場規模や競合他社となるべき企業の存在を洗い出すことが定石とされる。 しかし、市場規模をロジカルに考えていては、「まだ存在しない市場」における課題に取り組むことは論理的に不可能だ。

マスクが取り組んでいる宇宙飛行や電気自動車の普及は、今のところは誰も実現していないことである。

これ自体は、GoogleやFacebookその他、古くは電話や自動車の発明に至るまで、共通している。彼らはマーケットがない、あるいは小さくて胡散臭いところから、それを作り上げた。それはいわゆる市場規模からの逆算だと、たどり着けない思考である。

つまり、論理的に考えて「確実に解決するべき問題」であるならば、現時点で価値を計算するのがちょっと難しいとしても、それだけで取り組む価値があるということ。新しい事業を考える際には、そういったシンプルなロジックを組み立てることを恐れてはいけないということだ。


イーロン・マスクという人の本当にすごい点は、誰もが理解できるようなシンプルな発想に基づき、誰もが真似できない問題解決力を持って物事を進めていく実行力にあると思う。


課題のチョイスは、大まかに正しい方向であれば、ぶっちゃけなんでもいいのだと思う。あとは、変に横道に逸れずに「しっかりとやり遂げること」こそが勝負どころになる。


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