金融危機による不振で親会社に見放されるも復活!融資のアフィリエイトで6億ドルを売り上げる「LendingTree」

2018年07月24日 12:00

レンディングツリーはローン希望者と金融業者をマッチングするサービスを提供しています。

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創業者のDoug Lebda氏(1970年生)はMBA取得後、会計系コンサルティングファーム『PwC』で勤務していました。

ある日、彼は住宅を購入するためのローンの手続きがあまりに複雑なことに気づき、融資手続きを簡略化できるようなサービスを提供しようと考えました。

そして1996年にCreditSource USAを設立し、1998年にレンディングツリー(Lending Tree)に社名を変更しました。

レンディングツリーは2000年、NASDAQに上場を果たします。

2003年にはアメリカのメディア・インターネット企業グループ『IAC』によって買収されます。

しかし2007年から起こったサブプライム危機により業績が悪化し、2008年にIACから独立しました。


レンディングツリーの売上と営業利益の推移は以下の通りです。

レンディングツリーの売上は2007年から2011年の期間で大幅に減少し、サブプライム危機が起こった2007年と翌年の2008年には大きな営業赤字となっています。

しかし2011年以降、順調に回復し2017年度の売上は6億ドルを突破。

営業利益も2015以降黒字化し、2017年の営業利益は3313万ドルとなっています。

今回は、レンディングツリーの詳しい事業内容とV字回復を達成した要因について見ていきたいと思います。


「信用スコア」を用いた融資のマッチングサービス

レンディングツリーはオンライン上で、顧客と融資業者のマッチングサービスを提供しています。

彼らのビジネスモデルは非常にシンプルです。



金融機関(Financial Institutions)が不動産や自動車、学生などさまざまなターゲットに向けた融資サービスを取り揃え、レンディングツリーのプラットフォームに掲載します。

借り手は、掲載されている豊富な金融商品の中から自分に合うものを見つけ、ローンを申し込むというもの。

ローンが申し込まれたら、金融機関からレンディングツリーに対して成果報酬が支払われます。

そんな彼らのキャッチコピーは、「銀行に競争させたら、あなたが勝つ(When banks compete, you win!)」。


一般的な「アフィリエイト」と同じビジネスモデルですが、数多くの金融商品をそろえ、マッチングさせるための機能を幅広く提供している点が強みとなっています。


具体的な利用プロセスは、以下のように進んでいきます。

①ローンの種類を選択

企業サイトより引用)

まずはローンの使用目的(住宅ローン、自動車ローンなど)を選択します。

②信用情報の入力

次に、氏名・住所・年齢などから自己破産歴の有無や社会保障番号などを入力します。

③融資機関への見積もり依頼

入力した情報からレンディングツリーがクレジットスコアを抽出し、スコアを基に最適な融資機関を割り出して見積もり依頼を申請します。このときレンディングツリーは複数の融資機関に見積もり依頼を申請します。

算出されたクレジットスコア(企業サイトより引用)

④融資機関の選択

レンディングツリーから見積もり依頼を受けた融資機関は利用者の情報をもとにオファーを出します。利用者はその中から最適なものを選択することができます。



そもそも、なぜ複数の融資機関を比較し検討する必要があるのでしょう?

2018年7月における日本の住宅ローンの35年固定金利は1.3%前後であるのに比べて、アメリカの住宅ローンの30年固定金利は4.5 %前後となっています。

融資機関によって金利の差が大きくなりやすく、支払い利息を抑えるためには複数の融資機関を比較することが不可欠となります。


レンディングツリーは顧客に対しては無料でサービスを提供し、レンディングツリーを通じて顧客を獲得した融資機関から手数料を受け取ることで売上を獲得しています。

上の表はマッチング手数料(Match Fees)と融資が完了したときの報酬(Closed Fees)をサービス別に示したものです。


それではレンディングツリーの売上の内訳とその推移をみていきます。


2010年までのレンディングツリーは、融資の仲介(Exchanges and Others)だけでなく、住宅ローン事業(LendingTree Loans)と不動産仲介事業(Real Estate)を行っていました。

レンディングツリー自ら住宅ローンの貸し手となっていたということですね。

しかし、2007年にアメリカで起こったサブプライム危機により売上が大幅に減少。

2011年に住宅ローン事業(LendingTree Loans)と不動産仲介事業(Real Estate)から撤退 することを決定しました。  

このときに住宅価格の暴落による減損処理(Asset impairment)によって大幅な営業赤字となってしまいました。

では2011年以降に売上が増加している原因を知るために、2011年以降の売上内訳をみてみます。

売上は住宅ローン関連(Mortgage product)と住宅ローン以外(Non-mortgage product)に分類されます。

住宅ローン関連の売上は、アメリカの景気回復とともに堅調に増加しています。

また2015年以降住宅ローン以外の売上が急増し、2017年には売上全体の55%を占めるようになりました。

ではなぜここまで急激に住宅ローン以外の売上が増加したのかというと、M&Aによる拡大戦略をとっているから。

レンディングツリーは2016年以降に以下のような企業を買収しています。

① CompareCard (2016年11月)

クレジットカードの比較サイトを運営

② Deposits Accounts (2017年6月)

銀行の預金口座の金利を比較するサイトを運営

③ MagnifyMoney (2017年6月)  

クレジットカードやローン、預金口座など金融商品の比較サイトを運営

④ SnapCap (2017年9月)

企業の経営者向けに融資機関を紹介するサイトを運営

上記のような、金融商品の比較サイトを買収することで、住宅ローン以外のサービスの売上高を急増させています。

特にクレジットカードからの売上は2016年には3900万ドルだったのに対して、2017年には1億ドルに増加しています。


また、レンディングツリーの事業モデルがどうなっているかについては、コスト構造を紐解くとよくわかります。

営業費用のうち、セールス・マーケティング費用(Selling and marketing expense)が大きく70%前後となっています。

レンディングツリーは広告費などにお金をかけることでウェブサイトの訪問者を獲得し、金融商品のサイトに送客することで手数料を受け取る、というモデルであることがうかがえます。


累積損失は縮小傾向にある

ではレンディングツリーの資産の内訳をみていきます。

現金及び現金同等物(Cash and cash equivalents)の割合が高くなっていることがわかります。

2016年末から複数の企業を買収したため2017年に資産の総額が大幅に増加しています。

ちなみに、昔のバランスシートを見ると「貸付金(Loans held for sale)」という項目がありますが、2011年にローン事業を売却することを決定したことで、今はなくなっています。

資産の反対側である負債・純資産の内訳をみてみます。


累積損失(Accumulated deficit)は額が大きいものの、徐々に減少傾向にあります。

また2017年に長期借入金(Long-term debt)が増加しており、買収に必要な資金を借入で調達したことがわかります。


レンディングツリーのフリーキャッシュフローの推移をみてみましょう。

営業キャッシュフロー(Operating cash flow)はこの3年で急激に増加しています。

資本支出(Capital expenditure)は小さく、フリーキャッシュフロー(Free cash flow)も増加傾向にあります。

2013年と2014年は営業利益が赤字になっているにもかかわらず、営業キャッシュフローはプラスになっています。

これは従業員への給与をストックオプションなど現金以外で支払っているため、費用計上していた分をキャッシュフローの計算で足し戻しているからです。

また2016年は買収を行ったため大幅なマイナスになっています。

企業価値(EV)をみてみましょう。

現在の株価は232ドルで時価総額はおよそ28億ドルです。

現金および現金同等物が約3.7億ドルで有利子負債が2.4億ドルなので企業価値は29億ドルとなります。

現在のフリーキャッシュフローは9500万ドルなので、年間に稼いだキャッシュ30年分の企業価値がついていることになります。

巨大な市場でのシェア拡大を目標

最後にレンディングツリーの今後の展望をみていきます。

市場規模とシェア

企業サイトより引用)

金融商品の比較サイトの市場規模は25億ドルで、アメリカの金融機関の広告支出全体でみると200億ドルものポテンシャルがあるとされています。

レンディングツリーは金融商品の比較サイトに限定した市場ではシェアが31%であるものの、金融機関の広告支出全体でみると4%のシェアしか獲得できていません。


成長戦略

このような市場環境の中でレンディングツリーではどのような戦略を立てているのでしょうか。

企業サイトより引用)

レンディングツリーは住宅ローン関連以外のサービスに力を入れることで、収益の多様化を図ろうとしています。

特に、クレジットカード(Credit Card)個人向け融資(Personal Loans)ホームエクイティ・ローン(Home Equity)に関連するサービスに注力しています。

(ホームエクイティとは持ち家の住宅価格から住宅ローンの額を差し引いたエクイティ部分を担保として借入を行う方法)


数値目標

レンディングツリーは、以下のような数値を中長期的な目標として掲げています。

企業サイトより引用)

まず事業を以下の5つのセグメントに分類しています。

① 住宅ローン(Mortgage)

② クレジットカード(Credit Cards)

③ 個人向け融資(Personal Loans)

④ ホームエクイティ・ローン(Home Equity)

⑤ その他事業(Other Business)

そしてすべてのセグメントで金融機関の広告支出全体に占めるシェアを現在の3倍以上に増加させることを目標としています。


レンディングツリーはサブプライム危機により巨額の損失を計上しましたが、事業領域を集中することでV字回復に成功しました。

「金融商品のアフィリエイト」とも言うべきモデルで年間6億ドルもの売上をあげるというのはなかなか凄い話です。

一方、広告に顧客獲得を大きく依存するモデルであるため、広告単価が上がってしまえば収益性が低下する可能性もあります。


しぶとく生き延びているレンディングツリーが、今後どのように成長していくかチェックしていきたいと思います。