2018年もバフェット節が炸裂!会社の「KPI」を変えたバークシャー・ハサウェイの年次報告書を確認

2018年もバフェット節が炸裂!会社の「KPI」を変えたバークシャー・ハサウェイの年次報告書を確認

先日、投資家として象徴的な存在であるウォーレン・バフェット氏がCNBCのインタビューに答えていました。

2時間にもわたる超ロングインタビューで、経済情勢や投資に関する独自の考えを述べています。

そこで思い出したのですが、バフェットが会長を務めるバークシャー・ハサウェイ社の2018年アニュアルレポートをまだチェックしていません。

今回も色々と面白いことを語っているようなので、同レポートの中から特に興味深いバフェットの発言をいくつかピックアップしてみたいと思います。


30年近く決まり文句にしてきた「一株あたりの簿価」を会社のKPIから外した理由

今回のアニュアルレポートは、米国で新しく変更が加えられた一般会計基準(GAAP)に対する「グチ」からスタートしています。

これまでのバークシャーは30年近くもの間、一株あたりの「簿価(Book value)」がいくら増加したかによって、稼ぎ出したリターンを冒頭でアピールするのが通例でした。

ところが米国GAAP(一般会計基準)において「株式の(未実現)含み損益」を損益上に計上しなくてはならなくなったことで、その計算方法が使えなくなったのです。


バークシャーの株式ポートフォリオは、2018年時点で総額1,730億ドル(19.3兆円)にものぼる巨大さです。

当然、株式市場が5%マイナスになっただけでも100億ドル(1兆円)近い振れ幅でプラスになったり、マイナスになったりするわけです。

これが損益計上されると、当然バークシャーの簿価(Book Value)にも反映されます。まだ確定していないにも関わらず、必要以上に大きく見えたり小さく見えたりしてしまうのです。

これについてバフェットは、「営業利益に着目してくれ。その他のささいな損益はほとんど注意を払わなくていい」と述べています。

株式なので一時的には下振れすることもありますが、「(経営パートナーである)チャーリーも私も、現在のポートフォリオがいずれ大きなリターンをもたらしてくれると思っている」とも。


そして、「一株あたりの簿価」を最大のKPIとしなくなった背景として、バフェットはさらに2つの理由を挙げています。

1つは、企業体としてのバークシャー・ハサウェイがすっかりコングロマリット化したこと。

「もともと投資会社としての性質が強かったバークシャーだが、現在は事業の集合体としての性質が強くなった」と述べています。

これに関しては「何を今さら」という気もしますが、さらにもう1つの項目も大きな要因になっているようです。


それは、今後バークシャーが時間をかけて、かなりの規模で「自社株買い」を行うつもりであること。

自社株買いとは名前の通り、市場に流通している発行済株式を会社自ら買い戻すこと。

市場に流通する株式の数は減少しますが、バークシャー・ハサウェイの事業の価値は変わりませんから、「一株あたりの内在価値」は拡大することになります。

ところが一方で、自社株買いをした分だけバークシャー自体の純資産(簿価)は減少します。

つまり、これまで会社KPIとしていた「一株あたりの簿価」も減ってしまうのです。

この3つ目の項目が決定的な理由となって、バフェットは「一株あたりの簿価」をKPIとするのをやめることにしたようです。


それじゃあ今後はどうやって測ればいいかというと、バフェットは(長い目でみれば)バークシャーの「株価」自体が業績を反映する最も良い指標となるだろう、と述べています。


「コスト」に対する考え方:「調整後EBITDA」にバフェットが否定的な理由

昔からバフェットは、企業が独自基準でアピールする「調整後EBITDA」に否定的でした。

EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)とは言葉の通り、「金利や税金、減価償却などの費用を引く前の利益」という意味。

要するに、「設備投資とかは営業キャッシュフロー痛めないから、コストからは除外するね」という考え方です。

しかも「調整後」EBITDAの場合、企業は独自の基準で「どう考えてもリアルなコスト」を除外してしまうことが少なくないと言います。

最たる例としては、経営陣や従業員に対する「株式報酬(Stock-based compensation)」があります。

確かに株式を発行したからといって、企業にとって「現金の支出」があるわけではありません。

それでも株式報酬を支払った分だけ(つまり、ストックオプションなどを発行した分だけ)、一株あたりの価値は確実に目減りします。

バフェットはこれについて「株主からのプレゼントとでも計上するつもりか?」と皮肉っています。


リストラ費用についても、同様に「一時的なコスト」ということで「調整後EBITDA」では費用から外されるケースが少なくありません。

この点もバフェットは批判しており、「確かに毎年あることではないが、事業を継続する上では何らかのリストラは一般的に発生する。バークシャーは何十回ものリストラを実行してきて、その度に株主たちは耐えてくれているのだ」と述べています。

基本的にバフェットは株主のために会社を経営しており、株主を「顧客」のように扱っているのがよくわかります。


そして、バフェットらしい「例え話」も1つ。

第16代アメリカ大統領であるエイブラハム・リンカーンは、かつて「もし犬の尻尾を『脚』と呼ぶことにしたら、犬は何本の脚をもっているだろうか?」という疑問を投げかけたそうです。


リンカーンいわく正解は「4本」。

「尻尾を『脚』と呼んだところで、尻尾が実際に脚になるわけじゃない」というのがその理由です。

いわゆる「意見」と「ファクト」の違いをうまく言い表したたとえとして知られているようです。

バフェットはこの話について、「リンカーンがもしウォール街にいたら、孤独に感じたことだろう」と述べています。


バークシャー・ハサウェイの投資ポートフォリオの現在

最後に、総額1,730億ドル(19.3兆円)にものぼる巨大な株式ポートフォリオの現在についてまとめておきましょう。

以下のようになっています。

バークシャーにとって最大の投資となっているのがAppleへの投資で、360億ドルで取得した持分(5.4%)が403億ドル(4.5兆円)に拡大しています。

その次に大きいのはバンクオブ・アメリカで226億ドル(2.5兆円)。こちらは116億ドルで取得しているので、1.9倍以上になっています。

続いて、同じく金融会社のウェルズ・ファーゴが207億ドル(2.3兆円)。106億ドルで取得しています。

そのほか、1社で100億ドルを超えているのはコカ・コーラ(13億ドル→189億ドル)、アメリカン・エキスプレス(13億ドル→144億ドル)あたり。大ホームランですね。

株式ポートフォリオ全体としては、1,029億ドルで取得したものが1,728億ドルに拡大しているという形。

主要ポートフォリオでマイナスになっている銘柄は「JPモルガンチェース」だけで、「その他」もかなりのリターンを出していることがわかります。


これらのポートフォリオについて、構成比率ベースで見てみましょう。

驚くべきことに、現在のマーケットにおける価値で計算すると、「Apple」「バンクオブ・アメリカ」「コカコーラ」「ウェルズファーゴ」「アメックス」という5社だけでポートフォリオの70%近くを占めています。

中でもアメックスとコカコーラについてはかなり長い期間保有しており、2銘柄とも取得金額から10倍以上の価値に膨れ上がっています。


ウォーレン・バフェットは88歳、パートナーであるチャーリー・マンガーは95歳。

二人とも日本でいう「後期高齢者」の年齢ですが、いまだに元気そうなのはすごいですね。

とはいえ、バフェットは後継者の育成もさすがに考えており、2018年のはじめにはアジット・ジェイン氏を保険事業のトップに、グレッグ・アベル氏をそれ以外全ての事業に対する権限を与えたとのこと。


このうちグレッグ・アベル氏は1961年生まれの57歳ということで、67歳(1951年生まれ)のアジット・ジェイン氏よりも10歳若い年齢です。

それもあってかバフェットの後継者として有力なのはアベル氏なのではないかと、各所で報じられています。

ウォーレン・バフェットが語る投資のリターンを「最小化」する方法

2017年08月22日 10:59

ウォーレン・バフェット翁が2005年の報告書の中でまたしても興味深い話をしていたのでまとめます。

テーマは「どうやったら投資リターンを最小化できるか」です。彼らしいシニカルなユーモアを存分に盛り込んだ内容となっています。

バフェットの投資に対する考え方

2017年03月20日 13:39

ウォーレン・バフェットはいわゆるバリュー投資の代表的な投資家だと言われているが、1993年の「株主への手紙」の中で本人がこの話題について言及しているのを見つけたので、メモがわりにまとめておく。

原文と簡単な要約