【書評】フェイスブック 不屈の未来戦略

2017年07月15日 20:49

Facebook IRページより)

この本は、映画「ソーシャル・ネットワーク」でひねくれたオタクとして描かれたマーク・ザッカーバーグが、かつて繁栄を誇ったSNS「マイスペース」などと同じように消えていくんじゃないかという周囲の目をよそに、この7年間で世界有数の企業に押し上げてきたプロセスを内側から描いた本である。

著者は、インテルで最初のマイクロプロセッサーの開発に携わり、インターネットの台頭の時期にはインテルのCEOだったアンディ・グローブとともに働いたという経歴の持ち主。当時からシェリル・サンドバーグ(フェイスブックCOO)の顧客であり、近年は彼女に誘われフェイスブックの広告事業の開発チームに参加していた。つまり、IPO以来のフェイスブックの成長を組織の内側から見てきた人である。


2012年にIPOしてから100日間で、フェイスブックの時価総額は1000億ドルから500億ドルへ、ほとんど半分に落ち込んでしまっていた。しかも当時、証券市場全体の調子が悪かったということはなく、ナスダック総合指数は同期間で10%も上昇していた。そのためにかなり重苦しい空気が流れ、メディアからは「フェイスブックのIPOは大失敗だった」とボロクソに言われ、株主からの訴訟問題に発展するなどかなり大変だったようだ。

本著では、著者自身がジャーナリストでも作家でもないプロダクトを作ってきた人ということで、これまでにない視点で「組織の内側から見た」ザッカーバーグが描かれていると思う。

読みながら、気に入った箇所をツイートしていったので、それをテーマごとにまとめてみる。

ミッションドリブンな姿勢

マーク・ザッカーバーグが子供の頃、歯医者である父親と家族をつなぐ「ザック・ネット」を作ったことは有名な話だが、そこから20年以上もの間、彼は一貫して「人と人とをつなぐ」ことをやってきたとのこと。

そんな彼にとって、Yahoo!から10億ドルの買収提案があろうと乗るはずもなく、その理由として述べたのが上のツイートの内容らしい。

当時、大物投資家のピーター・ティールすらも「会社を売却するべきだ」という姿勢だった中で、ザッカーバーグは「こんな形式的なミーティングはさっさと終わらせましょう、こんなところで会社を売るはずがないですから」と言ってとりつくしまも与えなかったという。

今でこそ大物CEOという感のあるザッカーバーグだが、昔はどちらかというとギーク感が強く、一見すると弱そうな印象も抱かせる感じだった(参考:次のツイート)らしいが、それでも会社を売ろうという気持ちは微塵もなかったようだ。

フェイスブックという会社がいかに「ミッション」というものを大事にしているか、という話は本の中で何度も強調されており、ザッカーバーグの「人と人がつながれる場所を作る」という強い意志が、シェリル・サンドバーグをはじめ、多くの優秀な社員の採用につながっているらしい。ザッカーバーグ自身もその姿勢のおかげで、どんどん自分自身の意志を強めていったように思える。

インスタグラムの買収

フェイスブックは2012年に当時社員数13名、ユーザー数3000万人にすぎなかったインスタグラムを10億ドルで買収している。

ここで印象的だったのが、ザッカーバーグとインスタグラム創業者のケヴィン・シストロムの「個人的な」関係性である。

ケヴィン・シストロムという人は、インスタグラムを見ればわかるように、コンピューターと写真に興味があり、ファッションなどに対しても独自の「美学」を持った人らしい。

シストロムはフェイスブックの創業期からシリコンバレーのスタートアップ界隈にはいたようで、ザッカーバーグから会社のメンバーにならないかと誘われたり、ツイッターが生まれる前のオデオ社で現CEOのジャック・ドーシーの隣で働いたりしていたそうだ。

その後、インスタグラムが大きくなると、かつて横で働いていたジャック・ドーシーから推定5.25億ドルでの買収を持ちかけられるも、シストロムは独立して成長する道を選び、ベンチャーキャピタルから5000万ドルを5億ドルの評価額で調達する。

ところが、それが決まったわずか二日後にザッカーバーグは2倍の10億ドルでの買収を持ちかけ、たった48時間で合意をとってしまったという。本の中ではシストロムがこの買収提案を受け入れた理由として、「ザッカーバーグとの個人的な関係性」、そして「『人と人をつなぐ』というザッカーバーグの強い意志への共感」があったと言っている。形こそ違えど、彼らはプロダクト作りに関して共通する価値観を持っていたのだろう。

周知のように、インスタグラムはその後ツイッターを追い抜き、今や月間7億人が利用する巨大サービスとなった。広告による収益化も進めており、フェイスブックの収益源となって10億ドルの買収額を回収するのは全く遠くない話だと思う。

しかし面白いのは、インスタグラムを買収してよかったのは、良質なプロダクト・ポートフォリオを増やしただけに留まらないという点だ。本書によれば、その後のWhatsAppや、Oculus Riftなどの買収がまとまったのもインスタグラムの成功のおかげだという。フェイスブック傘下に入ったインスタグラムが大成功したことで、シリコンバレーのスタートアップや開発者たちに対して「フェイスブックの下であれば、自分の製品を最大限に育てることができる」という最高のブランディングになったというのだ。

国際化、とくに中国市場への意志

これも周知だが、フェイスブックやグーグル、ツイッターなどのインターネットサービスは中国国内では利用することができない。

しかし、ザッカーバーグは将来的にフェイスブックを中国でも利用できるようにしたいという思いの中、ずっと継続的に中国政府と良好な関係を作り続けているという。

中国参入が目的で結婚したわけではないだろうが、ザッカーバーグの奥さんは中国系の人で、おじいさんは実際に中国人らしく、ザッカーバーグ自身もマンダリンを学習し、北京の清華大学で講義を担当できるほどに上達している。

これを聞くと、我々一般人が中国語をやらない理由はなんなんだと思わされるが、まあそれは置いておいて、もし仮に将来フェイスブックが中国でも利用可能になるとしたら、それはものすごいポテンシャルである。

すでに存在するQQやWeChatなどのサービスを置き換えることは難しいだろうが、それでも中国人と中国外の人がコミュニケーションを取るために、フェイスブックや有意義なインフラとなるのは間違いない。

その他、全体の3割しかインターネットを使っていないインドや、多くの新興国などで、インターネットのインフラ自体を整えようという活動を展開しているが、この活動は想像よりはるかに大変らしい。インターネットが普及していない国というのは往往にしてインターネットの利便性を知らないケースが多いからだ。

そのため、実際にインドでは政府から禁止命令を食らったり、多くの国でかなり困難な目にあっているらしい。先方からすると「デジタル植民地化されるのでは」という不気味さも感じるらしい。。

正直、「ドヤり合いバトルフェスティバル」の場と化しているフェイスブックというSNSは個人的にあまり好きではないが、それでも友人との連絡手段の場としては絶対的なツールであり続けるだろう。とくに外国人の知り合いとつながるには、誰もが大抵アカウントを持っているフェイスブックというのは便利である(持ってないケースが増えているという噂もあるが)。

そして何より、これだけ優秀な人たちが、「人と人をつなぐ」というミッションのもとに、真摯に取り組み続けている会社ってフェイスブック以外にはないよなあ、ということで今後も極めて有望な会社ではあり続けると思う。楽しみ。

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