メアリー・ミーカーのスライド333枚から浮かび上がる「7つのトレンド」

メアリー・ミーカーのスライド333枚から浮かび上がる「7つのトレンド」

2019年06月13日 12:00

クライナー・パーキンスの元パートナー、メアリー・ミーカー氏(現在は新ファンド「Bond」を創立)による「インターネット・トレンド」が、今年も公開されました。

今回もスライド数が333枚という超巨大なレポートになっています。

カバーされたのは、インターネットユーザー数からEコマース、デジタル広告、データ量、フリーミアム・サブスクリプション、画像共有、ヘルスケア、インタラクティブ・ゲーミング、オンデマンド経済、中国インターネットなど多岐に渡ります。

メアリー・ミーカー氏は333枚のスライドをわずか30分で話し終えていますが、きちんとチェックするとどう考えても1時間はかかってしまいます。

そこで今回は、レポートの中でも特に重要だと思ったトレンドを7つのポイントに絞り、「インターネットの今」について考えてみたいと思います。

インターネットの成長はアジアが牽引していく

まずは、インターネットユーザーの動向です。

2018年、インターネットユーザー数は38億人に達し、はじめて世界人口の半数以上がインターネットにアクセスできる状態になりました。

中でも拡大を牽引しているのはアジアで、世界のネットユーザー数に占める割合は、今日の53%。

アジア圏の人口の中では、48%がインターネットにアクセスできる状態です。

さらに、その中でも圧倒的なのが中国とインドです。世界全体のうち、中国が21%、インドは12%、アメリカは8%の割合を占めています。

中国とインドは、アメリカに比べてはるかに大きな拡大余地を残しており、これから先も、少なくともユーザー数という意味では、アジアがインターネット市場の成長を牽引することは確実と言えます。

今のところ、テクノロジー産業における時価総額トップ30社のうち、アメリカが引き続き18社と多くを占めています。中国は7社で、それ以外は5社しかありません。

さて、これから世界のインターネット企業のトップオブトップがどうなるかについては、大きく2つのシナリオが考えられます。

1つ目は、「ネット人口の拡大により中国企業がトップを牛耳る」こと。2つ目は「グローバル展開に成功したアメリカ企業がトップの座を守る」という方向性です。

現実は両方のハイブリッドになりそうな気がしますが、全体のトレンドとして「勢力が各地域で分散していくのか」「全世界を牛耳るプラットフォームが出てくるのか」というのは、インターネットが進む方向として大きな分岐点になりそうです。

あらゆる端末が生活に溶け込んでいく

人々が日ごろ触れている「デジタル端末」にも、大きな変化が起こっていることがわかります。


インターネット広告の世界では、デスクトップ広告の領域はもはや横ばいとなり、モバイル広告が成長を牽引しています。

インターネット広告市場全体はプラス22%。速いスピードで成長を続けており、なおかつここ5年は加速傾向にあります。

パソコンとモバイルを比較すると、パソコンの接触時間が1日2時間(大人)に下がっている一方、モバイルは3.6時間に拡大しています。

また、テレビとの比較では、モバイルへの接触時間が2019年に始めてテレビの視聴時間を超える見込み(アメリカ)です。

デジタル広告全体でみると、FacebookとGoogleの寡占状態が、わずかながら崩れつつあります。

GoogleやFacebookの売上成長に対して、AmazonやTwitter、Snap、Pinterestなどの「第三勢力」の勢いが大きく上回っているのです。

デジタル広告全体が成長しているため、どこも伸びているものの、GoogleとFacebookの市場シェアは(わずかながら)低下していることになります。

とはいえ、依然として人気を集めているのはYouTube(Google)とInstagram(Facebook)です。1日に1回以上サービスに触れるユーザーの割合は、それぞれ22%と13%(2017年Q2)だったのに対し、2018年Q4には27%と19%に達しています。

全体として、画像や動画を中心としたメディアが伸びているのは間違いありません。

ただ、動画視聴時間に占めるモバイルの割合は2018年時点で28%ほどと、それほど大きくはありません。それでも、この5年で2倍以上に拡大しています。

意外なことに、アメリカではPodcastの利用者数が大きく拡大しています。2008年の2,200万人から、2018年には7,000万人に到達しています。

同じくAmazon Echoも急速な拡大を続け、インストール数は1年で4,700万まで倍増しています。

これまた意外に急拡大しているのが、ウェアラブル端末です。

Fitbitなどは死にかけていると評判ですが、ウェアラブル全体としてみればアメリカでの利用者は5,200万人に。4年で倍増というペースです。

全体として感じるのは、インターネットに接続するデバイス自体が多様化しているということ。

かつてインターネットと言えば、パソコンでブラウジングするものでしたが、現在はスマホ、ウェアラブル、スマートスピーカーなど様々な選択肢があり、ユーザーの生活に寄り添う形になってきています。

これから5GやIoTの要素技術が発展するにともない、インターネットは生活の至るところに浸透し、境界線が見えなくなっていくのでしょう。

画像コミュニケーションの爆発的増大

もう1つ、重要な流れとして存在しているのが、「画像」の通信量が爆発的に増加していること。

歴史上、人類はテキストによるコミュニケーションを発達させてきましたが、もはやその必要がないと思えるほどにビジュアル情報の通信技術が発達してきたのです。(と言いながらテキストを打つ)

撮影される画像の数はこの数年で急拡大し、Instagramをはじめとする画像共有アプリのユーザー数はそれ以上に増加しました。

2006年にテキスト共有だけでスタートしたTwitterが、今は画像や動画共有にも力を入れているのは、Twitterをお使いの方なら日々感じていることでしょう。

そして、始めは画像SNSに過ぎなかったInstagramは、今やコマースのプラットフォームとしての進化を始め、同様の流れはPinterestやGoogleレンズにも起こっています。

画像を起点としたショッピング体験」が今後も進んでいくことは間違いなさそうですし、ビジュアルを用いた方が便利なことなら、なんでもビジュアル化していく可能性が高いと言えます。

ゲームの世界でのコミュニティが拡大していく

もう1つ、世界的に拡大を続けている領域が「インタラクティブ・ゲーミング」の領域です。

FortniteやPUBG、荒野行動などに代表されるこのジャンルは、プレイをしながらリアルタイムにユーザーとコミュニケーションを取ることができ、なおかつプレイを「視聴する」のも1つのエンターテイメントとして拡大しています。

ゲーマーのコミュニケーションプラットフォームである「Discord」は、ユーザー数が2.5億人規模となり、倍々ゲームの成長を続けています。

同じように、ゲーム実況プラットフォームの「Twitch」は、2018年になってから急激に利用料が増大しています。まさに非連続的な成長です。

インターネット通信が高速・安価になっていくにつれ、ゲームを通じて生じるコミュニケーションもさらに拡大することになりそうです。

映画「Ready Player One」のようなゲーム上での仮想社会が、今まさに現実化しはじめているのかもしれません。

定期課金モデルがあらゆる領域で当たり前になる

ビジネスモデル面では、フリーミアム型のサブスクリプション・モデルが急成長を続けています。

オンラインゲームの世界でもフリーミアム型のモデルは多く使われますが、ユーザー数に占める有料課金社の割合が、この3年くらいで軒並み上昇しているのは興味深いトレンドです。

ネクソンなんかは10%くらいから20%弱へと、ほとんど倍増しています。アングリーバードで知られるRovio社は、(割合自体が小さいものの)それ以上です。

エンタープライズ向けソフトウェアの世界でも、「SaaS」と呼ばれるクラウド型の定期課金ビジネスが急成長を続けています。

Googleの「G Suite」は顧客数が400万を超え、つい先日上場したZoomも20万を超える顧客数を誇っています。

個人向けサービスでも、SpotifyやNetflixなどが急成長しているのはご存知の通りだと思います。

Amazonの「Amazonプライム会員」も、すでに1億人を超える登録者がいます。

サブスクリプション・サービスでは、顧客に利用を続けてもらうために良質な体験を提供しつづけられるかどうかが大きな勝負どころになります。

汎用的なサービスになるほど、要求されるサービスの「質」は非常に高く、成功するサブスクリプションとそうでないものが、二極化していくことになりそうです。

その一方、よりニッチな需要を満たすサブスクリプションは無限に生まれ、あらゆる体験をサブスクリプション型で「利用する/しない」を選べる世界になっていきそうです。

データ量の爆発的な増大が、新しい需要を生む

AmazonやGoogle、Microsoftは、それぞれ「AWS」「Azure」「GCP」と、事業者向けにクラウドの土台を提供しています。

こうしたクラウドサービスは、前年比50%を超える急成長を続け、その規模はものすごいことになっています。

こうした流れを支えているのが、インターネット上のデータ量の爆発的な増大です。

新しく生み出されるデジタルデータは、2025年までに今の数倍もの規模に達する見込みです。そのほとんどが元データではなく、レプリケート(複製)されたデータだというのが興味深いですね。

こうした流れを鑑みるに、AWSやAzureなどのクラウドサービスは今後も長く成長が期待できそうですが、ここで注目したいのは、データ量の拡大(=デジタル社会の浸透)自体が生み出す事業機会です。

インターネットから離れられない人は増え続けており、2018年にはアメリカ人の26%が「ほぼ常にオンライン状態」だそうです。

若い世代ほどその傾向は強く、18歳から29歳までの若者では39%がその状態だと言います。

中でもSNSによるマイナス面を感じる人は多く、自己表現によるポジティブ面よりも睡眠への悪影響の方が大きく感じているようです。こうしたネガティブ面を解決するサービスの需要は拡大しそう。

また、人間には「悪い情報」を拡散したがる傾向があるというのも見逃せません。

世の中のニュースをFacebookやTwitterを経由して受け取る人たちの数は多く、よりセンセーショナルなニュースが拡散され、広まりやすくなる傾向にあります。

こうした傾向は、政治的イデオロギーの増幅や、フェイクニュースの拡大、価値観の分断などにつながる可能性があります。

そのような状況の中で、Facebookをはじめとするプラットフォーム側は、問題のあるコンテンツを抑制するための取り組みを本格化させています。

「ファクトチェック」を行う独立系の組織は急速に増え始めています。データ量の拡大により、今後も世の中には数多くの新しい職業が生まれていくのでしょう。

オンデマンド経済によって労働の選択肢が増える

最後にピックアップしたいのは、オンデマンド・エコノミーの拡大です。

アメリカでオンデマンド・サービス(配車やフードデリバリーなど)を利用する消費者の数は5,600万人に達し、この2年で倍増しています。

それにも劣らず拡大しているのが「オンデマンド・プラットフォームを使って働く人たち」で、2018年には660万人。2015年から3倍近く増えています。

オンデマンド・ワーカーのうち47%は、それまで仕事がなかった、すなわち無職の人たちとのことで、これは驚くような数字です。

どうやら、この中にはUberやDoorDashのようなリアルタイムの注文サービスだけでなく、EtsyやAirbnbなどのマーケットプレイスも含まれているようです。

こうしたサービスの進展により、これまでになかった働き方が可能になっていることは間違いなさそうです。

また、アメリカでは労働者の5%がリモートワーカーになっているそうです。(2000年は3%)

こうした流れを後押ししているのがSlackやZoomなどのコラボレーションツールです。

同じオフィスにいなくても働きやすい世の中になれば、より多くの人たちがリモート勤務可能な仕事先を選び、その結果、企業も変わっていくのかもしれません。