1時間に3,000万円の赤字をだす『WeWork』って一体どんな会社?(前編)

1時間に3,000万円の赤字をだす『WeWork』って一体どんな会社?(前編)


世界中でシェアオフィスを運営する『WeWork(The We Companyに名称変更)』というユニコーン企業があります。

そのWeWorkが1時間に3000万円の赤字を出しているとのニュースが先日話題になりました。

未上場企業として470億ドルの評価(世界No.4)を受けており、日本でも拠点を拡大している『WeWork』ですが、企業の実態はあまり知られていません。

今回はそんなWeWorkの創業経緯や事業内容についてまとめていきたいと思います。

2010年に創業されたWeWork

WeWorkの創業者アダム・ニューマンは、イスラエル出身の起業家です。

アダム・ニューマンは1979年、イスラエルのテルアビブで誕生。彼は高校卒業後、イスラエル軍隊に入隊しますが、5年ほどで退任。

そして2001年に妹のアディ・ニューマンのモデル業を手伝うためにアメリカに移住することになります。翌年の2002年、23歳になろうかというタイミングでニューヨーク市立大学バルーク校に入学。

2009年リリース時のサイト

その後『折りたたみ可能なハイヒール』や『ベビー用品』などで起業。しかし事業はなかなか軌道に乗らず、鳴かず飛ばずといった結果でした。

失敗続きだったニューマンですが、2008年にWeWork共同創業者ミゲル・マッケルビーと出会い、2人で創業したのが「Green Desk」。

「Green Desk」は空き部屋をシェアオフィスにして貸し出すと事業として開始されました。その後2人はGreen Deskを300万ドルで売却。

売却資金を元手に、2010年にアダム・ニューマンとミゲル・マッケルビーが共同創業したのが現在の『WeWork』です。

驚異的な売上成長と大幅な純損失

資金調達の変遷を見ていくとソフトバンクがかなりの資金をWeWorkに投入していることがわかります。

Funding Rounds:The We Company

WeWorkは、2012年にアメリカの著名ベンチャーキャピタル『Benchmark』から1,700万ドルを調達。その後2017年以降にソフトバンクから合計で100億ドル以上もの資金調達を実施しています。(評価額は470億ドル)

そして2017年7月からソフトバンクと合弁会社『WeWork Japan』を設立し、日本に本格的に進出開始。

2019年7月時点で、WeWorkは世界40ヶ国でサービスを展開するにまで成長しています。

売上の推移をみていくと2014年には0.7億ドルだった売上が、2017年には8.9億ドルにまで成長。Bloombergによると2018年の売上は18.2億ドルと倍々ゲームで増加しています。

売上は増加している一方、純損失は19.3億ドルと売上以上の損失を出しています。

世界のオフィスのメンバー数(会員数)は2019年1月時点で40万人ほど。国内のメンバー数は1万人を突破。メンバー数、業績ともにすごい勢いで成長しています。

ただのコワーキングスペースじゃない?

続いてWeWorkのメイン事業であるコワーキングスペースのメイン事業について見ていきます。

WeWork

WeWorkのメイン事業はシェアオフィス、コワーキングスペースの運営です。

入居する人数によって料金が変動し、少人数のリモートワーカーから250人の大企業まで入居することが可能となっています。

そしてオフィスには業務用プリンターから高速Wi-Fiまで業務に必要な設備が完備されています。

WeWork pitch deck

従業員1人あたりにかかるコスト(1年間)を比較すると、従来のオフィスが1万ドルほどかかるのに対し、WeWorkは7,800ドルほどしかかかりません。

敷金礼金もかからないため、オフィスへの初期入居コストが大幅に節約できるのが企業側の大きなメリットとなっています。

しかしここまでの説明だと、WeWorkは普通のコワーキングスペースかと思われますが、実はWeWorkの強みは他の点にあります。


①:『WeOS』と呼ばれる自社システム

WeWorkアプリ

WeWorkがただの不動産企業ではなく、テック企業として認識されている所以が「WeOS」と呼ばれる自社システムです。

WeWorkは入居者用のSNSやイベントアプリ、さらには施設への入退室や会議室予約システムなどを開発。スペースだけでなくソフトウェアサービスまで提供するプラットフォームとして機能しています。

WeWorkがプラットフォーマーになろうとしている姿勢は現在までの買収からも伺えます。

2017年にはソーシャル・コミュニティ・プラットフォームを提供する『Meetup』を買収。

Managed by Q

他にもオフィスの清掃などをオンラインで依頼できる『Managed by Q』などを買収しており、シェアオフィスに必要なあらゆる機能を買収によって補完しています。


②:ビジネス版アプリストア『WeWork Services Store』

WeWork Services Store

『WeWork Services Store』は一言でいうと、WeWorkのメンバーが利用できるビジネス版アプリストアといった感じです。

WeWorkはメンバーに向けて福利厚生プログラムや業務効率化ツールを『WeWork Services Store』を通して提供し、メンバーが行っているビジネスそのものを支援しています。

例えば、人事管理代行大手の『TriNet』と提携することで、今までは健康保険に加入することが困難だったフリーランスや個人事業主も保険に入ることができるように。

他にも『JP Morgan Chase』などの決済サービス、アメリカ大手配送サービス『UPS』、クラウドサービス『AWS』などとWeWorkが提携することによって、メンバーは割安な価格で業務効率化ツールを利用することができます。

これはWeWork側にとってもメリットが大きく、提携企業から紹介料を徴収することができ、WeWorkの収入源にもなっています。


③:データを活用してスペースの需要供給を予測

2015年にWeWorkはBIMに強みを持つ建築事務所『Case』買収。これにより3Dデータを活用したオフィス設計が可能になりました。

(BIM:コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデル(BIMモデル)を再現して、よりよい建物づくりに活用していく仕組み

さらにWeWorkはAIを活用し、800以上の会議室の活用状況をチェック。会議室の需要供給を適切にコントロールし、メンバーの生産性がアップするような取り組みも行っています。

プラットフォーム内で好循環が発生

これまでのWeWorkのプラットフォームの特徴をまとめると

『シェアオフィスのメンバーが増加』⇨『アプリストアのツールが充実』⇨『メンバーのデータも蓄積』⇨『データの活用により生産性が向上』⇨『顧客満足度がUP』⇨『シェアオフィスのメンバーが増加』

というようにWeWorkのシェアオフィスを起点にプラットフォーム内で好循環が発生するといった形です。


次回はWeWorkが展開するシェアハウス事業やフィットネスジムについてまとめていきます。

1時間に3,000万円の赤字をだす『WeWork』って一体どんな会社?(後編)に続く

参照

イスラエル海軍出身!「クソ野郎」からの転身を果たしたWeWork創業者アダム・ニューマン(前編)

イスラエル海軍出身!クソ野郎からの転身を果たしたWeWork創業者アダム・ニューマンの半生(後編)

WeWork のビジネスモデルと不動産業への 影響の考察

2019年はオフィス倍増──WeWork、日本市場で急成長のワケ