【書評】2050年の世界で予想される6つの出来事

2017年07月26日 23:25

エコノミスト誌が編集した「2050年の世界」を読みました。

投資にせよなんにせよ、どんな事業を行う場合でもいっていん未来予測は必要だと思います。

それが変化にせよ、無変化にせよ、一つの予測を前提として、資本を投じたり事業に身を投じたりするわけです。

ウォーレン・バフェットは未来の変化に対する予測について極めて謙虚な姿勢を保っています。しかし、その彼にしたって「自分の理解できる範囲で」というルールのもとで未来予測を行い、そこで計算した機会に投資を行なっていると言えます。

「ブラックスワン」などの著作で有名なナシム・タレブも未来予測に対して懐疑的な一人です。「ブラックスワン」というアイデア自体、誰も予測できなかった一つの出来事がそれまでの常識をひっくり返してしまう、というものなので当然といえば当然です。

しかし、そのタレブでさえ次のように述べていたそうです。

これは確かにうなずけることです。

未来の出来事が「いつ」起こるかを当てようとすると、タイミング次第で外れる可能性があります。

しかし、「いつか」そうなる可能性が高いのであれば、予測するタイムスパンを長くすればするほど当たる可能性は高くなります。10年後に車の自動運転が実用化されている可能性より、50年後に実用化されている可能性の方が高いですよね。

孫正義氏が近頃よく話している「シンギュラリティ(人工知能が人類のレベルを超えること)」にしても、将来的に起こるだろうという予測に賛成すること自体は難しくありません。人類の知能が限られている一方で、人工知能は指数関数的に進化を進めているからです(らしい)。

この本は、そういった将来予測の事例をなるべく論理的に列挙しています。

各分野に特化したジャーナリストが書いており、細かい部分を見れば「ん?」というところもありましたが、「考えるための材料を得る」という目的であれば十分役に立つ内容だと思いました。

前置きが長くなりすぎました。ここからは、本書の中で特に印象にのこった「未来に予測される6つの出来事」についてまとめてみます。

1. 今後の世界における人口動向のポイント

本書を通じて最も重要なのが、「世界の人口勢力図」に関する予測で、次のような予測が立てられています。

・2050年には世界人口は90億人を超える

・2100年にはナイジェリアの人口が世界3位、タンザニアの人口が世界5位になる

中国の人口は2025年に14億人でピークを迎え、減少に転じる

インドの人口は2050年時点で世界一に達するが、17億人でピークを迎え減少に転じる

・2000年時点で世界の3分の2の人口を持ったアジアの減少は世界の半分に割合が低下

・2000年時点でアフリカと欧州の人口はほぼ拮抗していたが、2050年にはアフリカの人口は欧州の3倍にまで膨らむ

・2010年から2050年までに世界人口は23億人増加し、そのうち半分がアフリカ人

・世界全体で高齢化が進み、65歳超の人口は8%から16%にまで増加

・人口の都市化も進み、2010年には人口の半分が都市部に移住していたが、2050年には70%に近くなる

・2025年には、人口1000万人以上の巨大都市は30を数える

キーワードは、「アフリカ化」「高齢化」「都市化」の3つのようです。

2. 「物理的な距離」は消えても「文化的な距離」は残る

ネットやスマホの普及で、世界の裏側とでもほぼリアルタイムで会話できるようになりました。そういう意味で「物理的な距離」はかなり消えたと言えます。

相手がテイラー・スウィフトだろうと、バラク・オバマだろうと技術的には簡単に連絡が取れるわけです。

そういえば、最近女優の真木よう子さんがツイッターで一般人に返信を返しまくるという見事な仕事をしていてすごいです。

現代のテクノロジーのおかげで、コミュニケーションにおける「物理的な距離」は消えつつあります。しかし、「文化的な距離」はまだ消えていないというのが本書の論です。

その最たる例が映画や音楽などのエンターテインメントです。

これらの分野では、それぞれの国や地域において、ローカルな作品の方がグローバルに人気のある作品よりも必ず優位にある、という傾向があります。テイラー・スウィフトやジャスティン・ビーバーがどれだけ世界を席巻しようと、AKB48は日本で人気があるように、それぞれの地域のローカル・アーティストはやはり人気があります。

本書では、どんなにグローバル化が進んでも、地域に根ざした「ローカライズされたエンターテイメント」の価値は決してなくならない、と結論づけています。

3. 高齢化社会による財政の悪化

これは特に日本との関係が強いトピックですが、長期的には世界全体で進みます。

世界的な高齢化には大きく二つの要因があり、一つは「平均寿命の継続的な伸び」、もう一つが「戦後のベビーブーム」です。

世界の中で特に高齢化が進んでいるのは日本とイタリアであり、米国は日本などと比べるともう少しマシです。しかし、それでも2035年のアメリカの連邦債務は、対GDP比で185%にまで跳ね上がるだろうと予想されています(2010年時点では60%)。

また、高齢化は先進国だけでなく、BRICsと言われた新興経済国でも進んでいきます。インドと中国では比較的軽微だとされていますが、ブラジルとロシアでは高齢化関連による国家支出が対GDP比で12.5%跳ね上がると予想されています。

そして、中国ですら2050年には中位年齢が48.7歳に達する見込みで、これはアメリカの40歳という予測よりもさらに高いです。中国はかなりの勢いで成長していますが、このままだと社会全体が豊かになる前に高齢化社会に突入してしまう可能性があると言います。

4. 「新興市場」の成長と主流化

1997年、世界銀行の調査研究部門が、いわゆる五大新興経済圏(中国、インド、ブラジル、ロシア、インドネシア)の長期的な成長を予測しました。

その計算では、世界のGDPに占める五代新興経済圏の割合が1992年から2020年までに倍増するとしていましたが、実際にはそれより10年早く倍増しました。

2001年にはゴールドマン・サックスのジム・オニールが有名な「BRICs」に目をつけます。インドネシアが除かれたのにはアジア通貨危機が理由だとされています。

ゴールドマン・サックスの予測は2008年の時点ですでに外れました。彼らの予想を超えたのです。

予測では、中国のGDPが2008年に2.8兆ドルに達するとしていましたが、実際には4.3兆ドルを超えました。同年のロシアの経済規模も、ゴールドマン予測の2倍、ブラジルも2.3倍にまで成長したそうです。

また、今後についても次のような予測が立てられています。

ゴールドマンサックスの予想では、2050年は今の新興国が経済規模のトップになった時代になるだろう、ということのようです。

また、新興国ではアメリカやヨーロッパの経済先進国がたどってきたよりも速いスピードで経済が発展することも指摘されています。この理由は、先進国からの経済的な投資を受けるからであり、また単に「先進国と同じことをするだけ」で経済が発展するからです。

また、新興世界の労働人口が増えると同時に、彼らの知的水準も上がっていく、という部分もあるために、今までにない速度で経済が発展するだろうと予測されています。

上にあげたように「為替レートの上昇」も新興国の経済規模発展に寄与すると予測されています。ゴールドマン・サックスのモデルでは、新興市場の労働者一人当たりの生産高成長率がアメリカの成長率を1%上回ると、為替レートはドルに対して0.5%上昇するそうです。これらの要因により、実質的な成長以上に新興国の経済は(相対的に)大きく成長するのです。

5. アジア経済の再興

「新興国のメインストリーム化」の話とかぶりますが、アジア経済が再びメインストリームになるという視点も重要です。

現代において、中国は先進国ではなく「新興国」として評価されるケースが多いですが、歴史的に見ると、中国が世界の経済圏においてトップ層に君臨すること自体は決して真新しいことではありません

19世紀までは世界最大の経済圏として突出しており、世界の生産高の2割から3割ほどを占めていたといいます。一時的に衰退するまで、インドとともに2000年近く世界経済を支配してきたのです。

本書では、2050年には世界の半分がアジア経済となり、経済バランスを回復するだろうとして、このことを「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などと書いてあります。

6. 情報技術の進歩は加速していき、人間には予測ができない

第二次世界大戦の終わりごろ、米国のルーズベルト大統領の科学顧問だったヴァネヴァー・ブッシュは『われわれの考えるごとくに』というエッセイをアトランティック・マンスリー誌に掲載したそうです。

その中で、人類の知識をすべて保存し、瞬時に呼び出すことのできる「メメックス」という夢のマシンを描きました。メメックスは、人間が観念と観念の間を結びつけられるように文書と文書をつなぎ、人間の思考を自動化するように設計されていた、とのことです。

ブッシュは当時、最高の科学者の一人として見られており、後進の科学者や技術者を触発しました。のちにインターネットとWWWの先駆けとなるものを作ったエンジニア達は、みんなブッシュのこの展望に影響を受けたといいます。

現在、情報技術はさらに発展し、ポケットに入るほどのデバイスからあらゆる情報通信を行えるようになりました。それでは、これから先はどうなるのでしょう。

調査会社のIDCによれば、世界の保存情報は、2年ごとに倍になるそうです。

情報技術の未来を考える際に重要な事実として、人々が把握している(と思っている)社会の動向と、現実がこれからどう展開していくかの間には、根本的な断絶がある、という問題があります。

それは、テクノロジーの世界は指数関数で成長していき、どの分野よりもそれが顕著だからです。

人工知能の父レイ・カーツワイルは、様々な技術が大衆化(彼の定義では米国人口の4分の1に普及すること)するのにかかる時間を調べることで、テクノロジーの成長速度を測ることができるとしました。

その方法によると、電話は1876年から35年かかり、テレビは25年ほどと短くなっていき、ウェブは1991年の誕生からわずか7年で大衆化しています。

また、カーツワイルによれば、この流れが加速していくことでいわゆる「シンギュラリティ(技術的特異点)」に至るとしていますが、これも人間の直感では全く理解ができないことです。

こんなことを言った人もいるそうです。

要するに、「テクノロジーの進化は加速度的に進化・普及していき、ほとんどの人には青天の霹靂のように見える」ということです。

最近だとスマートフォンの普及などはそういう感じがします。こういった流れは今後さらに加速していくということでしょうか。

それではどんなテクノロジーが?

ということで、次回は「2050年の技術」についてもまとめたいと思います。

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