債券王ビル・グロース氏が考える2017年最も重要なポイントは米長期金利の2.6%にある 

2017年01月12日 18:25

ビル・グロース(Bill Gross)氏をご存じだろうか。ウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスといった伝説の投資家と肩を並べる、債券業界における伝説のファンドマネージャーだ。

債券運用では世界最大級の運用会社であるPIMCOの創業者で、抜きんでた運用成績と独自の鋭い経済分析で有名な投資家である。彼の発言で債券市場が大きく揺れ動き、世界中の債券運用者が様子をうかがう程の人物だ。

尚、現在はPIMCO去り、ジャナス・キャピタル・グループで債券運用を行っている。創業した会社を辞めた経緯については以下を参照してほしい。

ピムコでの覇権争いに敗れた「債券王」ビル・グロース氏, WSJ, 2014/9/29 http://jp.wsj.com/articles/SB11426559292233444529604580183521286641924

未だ債券市場に大きな影響力を持つグロース氏が、毎月発行しているレポートがある。

タイトルは「Monthly Investment Outlook from Bill Gross」で、ジャナス・キャピタル・グループのウェブサイトから閲覧することが可能だ。

毎月示唆に富む内容が掲載されており、また多くの市場参加者読むことから、今後のマーケットを考えるうえでとても役に立つレポートと言えるだろう。

さて、1月のレポートが10日夜に公開された。内容は2017年の市場動向の先行きを読み解くための鍵。グロース氏はレポートの中で、単純明快に述べている。重要なのは米国の長期金利が2.6%を上回るかどうか。これが債券市場さらには株式市場の水準を決める重要な節目として挙げた。

昨年11月以降、株式市場では熱狂が、債券市場では絶望が渦巻いている。2017年は、株価は割高なのか、金利は高すぎるのか、がテーマになるという。

まず米国経済のファンダメンタルズについて見ていこう。

目下、注目はトランプ次期政権の政策にあるわけだが、GDP成長率を過去の平均2%から3%に引き上げることかできるかどうかが、トランプ次期政権の真価を問うポイントになると指摘している。過去3%成長する局面では、レバレッジを掛けたことによる企業利益の高い成長率が伴った。一方2%以下の成長の場合、企業利益は緩慢な成長に留まっている。たった1%の差でも、2%と3%には決定的な差として現れる。

トランプ氏率いる共和党が既にフル稼働にある経済をさらに刺激できるかどうかに注目していきたいとし、そのためには、企業が配当や買収に利用していた資金を設備投資に回す必要があると述べた。

ただ、グロース氏は3%成長に対しては懐疑的で、今後も2%の成長に留まると考えているようだ。高齢化による人口動態の変化、政府債務残高の増加、リスク増による金利上昇、技術進歩による雇用機会の剥奪、グローバリゼーションの否定など、生産性の成長さらにはGDP成長に対する脅威がくすぶり続けている。

新聞の見出しからはそういった問題は一時的に消えるだろうが、根底では経済の後退は進んでいる。トランプ氏の政策は今後数年間は経済を加速させるだろうが、長期的な成長率である2%を変えるほどのインパクトはなく、いずれ企業業績は鈍化し、株価の上昇は続かなくなると考えている。

上記のようなファンダメンタルズでは、現在の金利水準が高すぎるようにも感じてしまうわけだが、トランプ政権の政策による金利上昇は必然的であり、今後も上昇し続ける可能性は高いとしている。ではどの水準まで金利が上昇するかについては、過去のトレンドが参考になるそうだ。

長期金利がピークを付けた1980年代前半から、金利は直線的な下落傾向にある。過去30年の間に、長期金利は10%から2.4%まで下落した。年平均約0.3%の下落である。最近になって、この下落トレンドが破られようとしている。トレンドの現在の上限は2.55%から2.6%。テクニカルに判断するのであれば、長期の抵抗線である2.6%を上抜けた場合、債券市場は強気相場から、本格的な弱気相場に入ると述べた。

そのため、この2.6%という数字は、ダウの20,000ドルや原油価格の60$/バレルといった値よりも重要な意味を持つ。債券市場で30年間続いた強気相場が終わりを迎えるのであれば、これまでとは全く違う相場環境になるわけだから当然だ。

2017年1月11日現在、米長期金利は2.3%から2.4%の間を推移している。2.6%まではまだ30bps程開きがあるが、今後この開きがどうなるか注視しておきたい。

2.6%に近づくことがあれば、またこのテーマについてレポートを書こうと思う。

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